スタジアムビジネスとカフェ経営。

前回の『全くゼロからのJクラブのつくりかた』の書評では、サッカークラブの経営について触れたが、今、サッカークラブの経営力を高めるために注目されているのがスタジアムビジネスだ。

スタジアムビシネスとは、ホームスタジアムをイベントに貸し出したり、普段は入れないロッカールームなどの見学ツアーを実施したりして、サッカーの試合以外でも収益を上げるビジネスのこと。

最近、本田圭佑が所属するACミランなど、かつては隆盛を極めたセリエA(イタリア)のチームの凋落ぶりが顕著だが、セリアAはホームスタジムがチームの所有物ではなく、スタジアムビジネスを展開できない。一方で、バルセロナやレアルマドリード、そしてプレミアリーグの強豪チームはスタジアムビジネスで大きな収益を得るようになった。その差もあって、ACミランはかつてのように旬のスター選手を獲得する予算を捻出できない。

では、Jリーグのクラブはどうか? 基本的にJリーグのホームスタジアムは都道府県所有の公共施設だ。だが、Jクラブに指定管理者として事業委託することが多い。この「指定管理者制度」によって、Jクラブはスタジアムビジネスを展開できる。

Jリーグでいち早くスタジアムビジネスを始めた鹿島アントラーズは、スタジアムに地元民が利用できるフィットネスジムをつくったり、夏場にビアガーデンを営業したりして収益を上げている。

サッカークラブにとってスタジアム利用料は大きな経費でしかなかったのが、逆にスタジアムを活用することで新たな収益を生み出しているのだ。ホームタウン近隣の地域人口が少なく、大きなハンデがあると言われる鹿島アントラーズがJリーグ上位の予算を持っているのは、スタジアムビジネスなどを他チームに先駆けて展開しているからだ。

スタジアムビジネスの考え方は、カフェ経営などにも活かせると思う。サッカーの試合が毎日開催されていないように、飲食店も365日24時間営業しているわけではない。所有しているハコモノ(サッカークラブ=スタジアム/飲食店=店舗)の空いている時間を有効活用して収益を上げるのは、飲食店でもできるはず。ネマルカフェでも最近、営業時間外にテレビ、プロモーションビデオなどの撮影や食材を持ち寄ったパーティにスペースを有料で貸し出している。

ただ、そうした営業時間外のスペースレンタル事業を行なう上でも、そのカフェが人気のある店かどうかは重要だ。

スタジアムビジネスでも、チームが強くて魅力的であるほうが上手くいっているようだ。鹿島スタジアムのフィットネスジムやビアガーデンが地元の人に利用してもらえるのも、鹿島アントラーズが地元で圧倒的な人気を誇っているためだろう。

同様に、カフェのスペースレンタル事業を軌道にのせるには、そのカフェがお客さんにとって魅力的であるほうがいい。「自分が好きなカフェだから」「人気のあるカフェだから」という理由で利用したいと思う人も多いはず。逆に、誰もファンがいないような本業が全然ダメダメな店を使ってくださいと言っても、利用したい人は少ないと思う。

ともあれ、飲食業は生産性が低く、仕事が大変な割に働くスタッフの給料が少ないと言われる業界。スタジアムビジネスを参考にすることで、ひとつの打開策が見えるのではないだろうか。