『全くゼロからのJクラブのつくりかた』望月重良

元Jリーガーで、現在J3で戦うSC相模原代表の望月氏の本。望月氏はかつてトルシエ時代の日本代表にも選ばれていたので、サッカー好きならみんな知っているだろう。


望月氏は現役引退後に、相模原の居酒屋で店主から「サッカークラブをつくってほしい」と言われ、その気になってJリーグ入りを目指してクラブを立ち上げる。

神奈川県の社会人リーグ3部からスタートし、2部→1部→関東2部→1部→JFL→J3と毎年昇格し、わずか6年で本当にJリーグ入りを果たした。

1年もムダにせずにJリーグ入りを果たすために、望月氏は選手の入れ替えを積極的にやってきた。所属リーグで優勝しても、翌年に上のリーグで優勝するためにさらに選手を入れ替える。優勝に貢献した選手のクビを切るというのは心情的に結構辛いものがあると思うが、望月氏はきっぱり割り切っている。

厳しいことを言いますが、プロの世界で上を目指すために同情は要りません。僕が同情を捨てたせいで友達ではなくなった人間は大勢います。僕が目指しているものは何か? プロの世界であって勝ち負けがすべて、お客様から入場料をとって試合をしているのです。よりエンターテインメント性の高い、お客様に楽しんでもらえる白熱した試合をすることが使命です。

チーム発足当初、望月氏は経営者兼監督のような立場だったが、現在は経営のほうに力を入れている。当たり前だが、強いチームをつくっていくためには経営が重要だ。経営力(予算)を拡大していかなければ、例え良い監督、良い選手が集まってチームが強くなっても、一時的なもので終わってしまう。例えばオシム時代にジェフは強くなったが、数年後にはほとんどの主力選手が移籍して弱体化した。阿部や巻、羽生、佐藤勇人など、代表入りした選手に高額年俸を払えなかったためだろう。

現在のSC相模原の年間予算は3億円ほど。J2のザスパクサツ群馬が5億くらいなので、もう少し予算が増えればJ2で戦う戦力は整うのかもしれない。

しかし、J1で最多タイトルを誇る鹿島アントラーズは40億、浦和レッズだと60億弱ある。湘南は12億くらいで頑張っているが、遠藤や永木といった主力が流出しているのを見ると、今の予算感では現在の力を長く維持していくのは難しそうだ。

ちなみに、レアルマドリードは820億もの収入(予算)があるらしい。

Jリーグのクラブはこれまで、注目を集める経営者はいなかった。しかし、望月氏が現れ、岡田元日本代表監督も四国リーグのFC今治のオーナー経営者となった。経営者が注目を集め、それによってお金が集まれば日本のサッカークラブはもっと強くなる。期待したい。