『人が集まる「つなぎ場」のつくり方』ナカムラクニオ

荻窪にある、コアなファンが集うカフェ『六次元』。もう5年前くらいになりますが、あるサイトの取材でうかがったのをきっかけに、イベントなどに顔を出していた時期がありました。

その『六次元』のナカムラさんが本を出版していたので、読んでみました。『六次元』の経営について語った本ですが、コーヒーや食事の話はほとんど出てきません。語られているのは、「人をつなぐ場」であるために、いかに『六次元』を運営しているかということがメイン。

以下の箇所がとくに印象に残ったので、メモしておきます。

6次元という空間づくりは、ある意味、1冊の本づくりだと思っています。

今月は、誰に「連載(=展示)」をお願いしようとか、今月の「特集(=イベント)」は誰にしようかという感じで、空間と時間を立体的に編集していきます。もしかすると、これこそ未来の本であり、マジメディア(真剣かつ真面目メディア)なのかなと思っています。
お客さんは、自分で好きな部分だけを読めばいい。お店を好きにカスタマイズすればいいのです。
羊毛を紡いで糸をつくり、糸を編んで布にしたり、さらに切ったり貼ったりしながら、自分の本を編集していく時代になっています。
お店や街も自分で編集する感覚で、日常を雑誌化していく。
日々を編集していくっていう感覚を、すべての人がすでに持ち始めていると感じています。
だから、体験やプロセスには、お金を惜しみなく払う。
プロセスを見ることで参加している意識が芽生え、自分ごとに感じるんだと思います。自分に近いと感じるものが指示を集める。これからはプロセスを全部見せるやり方が、ひとつの方法です。
たとえば完成した料理を食べるだけよりも、その料理人が、こだわりのトマトをどこどこまで買いに行ったっていうほうに興味がある。そういうのにぐっとくる。美味しいだけじゃなくて裏側のドラマみたいなことをみんな知りたいのです。

 

『六次元』では、村上春樹の読書会が開催されたり、今でもおもしろいイベントがたくさん開催され、濃い常連さんが集まっているようです。

カフェに限らず、小さな飲食店が抱える難しい問題のひとつに、常連さんとの付き合い方があると思います。毎日のように常連さんが何人も集まり、スタッフも一緒になってわいわいやっているようなお店は、常連が一定数いるので売上が安定するというメリットもありますが、他のお客さんにとっては居心地の悪い雰囲気になってしまう可能性があります。

当然、たまたま入った新規のお客さんがリピーターとなってくれることは少なくなり、結局、常連さんの売上頼みになってしまいます。そうすると、自分勝手で迷惑な常連さんであっても歓迎せざるをえなくなり、そうした常連さんが幅をきかせるようになるという、あまりかんばしくないスパイラルに入ってしまうとかなり辛いはず。

常連さん&そうでないお客さんとうまくバランスをとって付き合い、お店の雰囲気をよくしてくれるような常連さんが付いてくれるようにしていくことが大切ですね。

人が集まる「つなぎ場」のつくり方 -都市型茶室「6次元」の発想とは