書体の楽しさを伝え、書体への著者の深い愛情を語る本。書体の勉強ができる本ではなく、「書体に注目すれば、もっと読書を楽しめそう」ということを感じさせてくれる内容になっています。
「書体は口調だ」と著名なデザイナーが言っていたという話を聞いたことがあるけど、本当に、どんな書体を選ぶかによって受け手の印象はかなり変わる。デザインの良し悪しって、半分くらいは書体の選択で決まるんじゃないかと思うくらい。
だから、デザインが上手い人は、書体(フォント)選びにセンスがある。デザイン関連以外の仕事に従事している人がつくったものは、イマイチなフォントを選びがちな傾向がある。というか、そうならざるを得ない。デザイナーは高額なモリサワフォントを含め豊富なフォントを所有しているけど、普通は持っていない。Macを使ってればまだしも、Windowsを使っていたりしたら絶望的にフォントの数が少ないし、ロクなフォントがプリインストールされていない。センスの問題以前に、そうした理由でWindowsパソコンでつくった書類はイマイチな見栄えになりがちなのだ。
僕の感覚値では、フォント選びのセンスがある人というのは、本を読む習慣のある人だ。文字を読んだ経験が豊富な方が、文章(コピー)の佇まい的なものに合致する書体を選べる。だから、デザインのセンスを磨くには、美しいものを見るだけではなく、本を読む必要があると僕は思う。
以下、『本を読む人のための書体入門』のメモです。
約30年前、日本にアップルコンピューターが登場したとき、たった2種類しかなかった和文フォントの数は、いまや3000種類以上とも言われています。
堀内誠一のように、個人の文字をきわめてしまった人は他にもいます。
まるで、オリジナルの書体を確立するように、文字がひとつのスタイルをあらわしていて、読者は文字を通して作品世界に深く入っていくことができる。
私はそれを勝手に、「オレ書体」と名づけているのですが、魅力的な「オレ書体」をもっている人に、昔から強烈に憧れる節があります。
「暮しの手帖」の花森安治や、美術家の横尾忠則、イラストレーターの和田誠(脚本家の三谷幸喜が和田誠のファンだそうで、そっくりの字をかくのにはびっくりしました。その気持ち、わかる!と、思いました)