『「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。』河岸宏和

「立ち食い蕎麦の蕎麦は実はうどん」という先日の記事の元ネタになった本。この本を読むと、ファミレスやチェーン居酒屋に行くのも怖くなる。。

以下、メモ。

 この店のハンバーグはひどいものでした。
 「リン酸塩」を入れて思いっきりカサ増しをしてあります。「リン酸塩」は水を抱えるから、いくらでも増量できるのです。ひき肉に「リン酸塩」と水を入れて練れば、「リン酸塩」が水を抱え込んで膨らむわけです。
 「リン酸塩」は独特の味がするし、食感がプリプリしているから、すぐわかります。それに練りすぎていて、もう肉の食感がしない。こんなに練ってはハンバーグではありません。ソーセージかチクワかという話です。肉のうまみがまったくしない。
 「植物性タンパク」の混ぜ具合もすごいの一言でした。
 これに「調味料(アミノ酸等)」や「肉エキス」で味をつけ、「着色料」で茶色に色をつけたら誰もが肉だと思ってしまう。下手をすれば、肉の割合は20%以下でしょう。これはもう「牛肉ハンバーグ」ではない、「植タン(植物性タンパク)ハンバーグ)とでもいうべきシロモノです。

 

 そうやって普通のことをやっていれば十分おいしいのに、なぜカサを増したり、数日前からつくり置きをしたり、おかしなことばかりするのでしょうか。
 そこにあるのは「儲かればいい」という姿勢でしかありません。
 おいしいものをお客さんに食べてもらおう、喜んでもらおうという姿勢がまったく感じられない店でした。

 

 私の考えですが、食べ物には次の3つの要素が必要だと思います。

①おいしいこと
②安全であること
③機能があること

 機能というのは、栄養や嗜好を満たすなど、食べる人が得られるメリット全般のことです。
 家族の食事をつくるとなれば、誰もがこの3つをどれも同じように大事につくるはずだと思います。
 ところが、いまの外食で最も優先されているのは何でしょうか。
 それは「安さ」と「安全」です。安くて安全なら、「味」は二の次でいい。
 たとえば、マクドナルドでは食中毒はまず出ません。それは衛星管理がほぼ完璧になされているからです。生野菜は「消毒剤」(次亜塩素酸ソーダ)の入った水で過剰なほど洗ってから使われます。だから世界中どこに行っても「安全」なのです。
 「安さ」が売りの居酒屋の全国チェーン店で出されるメニューは、ほとんどが中国や東南アジアでつくられて真空パックや冷凍で運ばれてきたものです。長期輸送するので、その間に菌が繁殖しないように過剰ともいえるほど加熱がなされます。
 こういう食べ物には、「おいしさ」も「栄養」も残っていません

 

 都市部でも地方に行っても、最近では全国どこでも同じチェーン店を見かけます。なぜ、ここまでチェーン店が日本全国に広がったのでしょうか。
 その裏側にあるのは「個人店の2極化」だと私は考えています。つまり、「個人店は当たり外れが大きい」のです。
 

 個人店の中には、流行っていないお店もたくさんあります。
 立地や店構え、料理の味などさまざまな要素がありますが、そういうお店はせっかく食材を仕入れて下ごしらえしても、お客さんが来ないのでロスが出てしまいます。
 すると、どうするか。

①「仕入れ」の手を抜く——毎日市場に通って、いい食材を仕入れなくなります
②「仕込み」の手を抜く——ロスが出て廃棄するだけなのでやめてしまいます
③「調理」の手を抜く——手間暇かけて一品一品、手づくりしなくなります

 この3つの手を抜く一方で、お客さんの数を増やそうと「メニューの品数を増やす」ようになります。

 

 みなさんの地元にも、おいしくて評判の、いつも混んでいるお店、賑わっているお店が少なからずあるのではないでしょうか。
 そういう店はなぜおいしいのかといえば、きちんとした食材を使って、いちから手づくりしているからです。おいしい店はきちんとつくっているからおいしいのです。

 

 なぜこれほど「ラーメンブーム」が起きているのか。
 もちろん日本人の趣向の変化や店の入りやすさ、手軽に食べられるといった複数の理由があると思いますが、私は一番の理由は「ラーメン店の中には、真面目にきちんとつくっている店が多く、おいしいから」だと思います。
 ラーメン店の中には、骨や野菜を煮込んできちんとスープをとっている店がたくさんあります。だからおいしいのです。仕入れのスープを使ったのでは、いつも行列ができるような店になりません。

 

 先ほど、同じ食材でも手をかけるかどうかで出来上がりの味はまったく異なると述べましたが、同じ食材でも切り方ひとつで味はまるで変わります。
 同じ肉でも切り方で味は大きく異なります。切れ味のいい包丁で細胞をつぶさないように切らないといけない。下手に切ると、おいしさまで切ってしまいます。
 付け合わせのキャベツだって、繊維に沿って切るかどうかで仕上がりが違います。味噌汁に入れるネギも、包丁の入れ方ひとつでおいしさが違ってきます。
 それが職人の技というものです。

 

 安さを売りにしたチェーン店は一様に「うちは大量仕入れ・大量販売でコストを低く抑えているから安い」と胸を張ります。
 しかしそれはウソだと私は思います。
 こと食品に限っては、大量仕入れでは安くならないのです。
 たとえばレタスを大量に仕入れても安くはなりません。
 野菜の市場で「大量に仕入れるから値段を安くしてほしい」と突然交渉しても、それはムリな話。

 

 おおむね国産牛肉はスーパーで買うとしたら、100グラム500円、豚肉は100グラム200円、鶏肉は100グラム100円ほどです。
「牛のほうが数が少なくて貴重だからでは?」
 などと思われるかもしれませんが、一番の理由は「出荷できる大きさになるまでに食べるエサの量の違い」です。
 エサを鶏を4としたら、豚は7、牛は11ほどのエサが必要になります。

 

 成型肉というのは、骨のまわり削りとった端肉や内蔵肉を結着してつくったものです。どんな形にもつくることができ、N君が食べたものはステーキの「形」にした成型肉です。
 成型肉は法律違反でも何でもありません。スーパーでも「サイコロステーキ」として売られていますが、その場合はきちんと「成型肉」と表示があります。
 しかし外食店では、この店のように黙って成型肉を使うところが少なくないのです。

 

 成型肉に使われるのは端肉や内蔵肉と述べましたが、これらは形状がミンチ(ひき肉)状だったり、ドロドロだったり、要するに肉としての形を成していません。
 それを強引にくっつけて固めるために、「結着剤(リン酸塩)」を使います。「リン酸塩」は保水性を高めるので、肉がジューシーになり、カサを増すこともできます。
 また成型肉は、端肉や内蔵肉をかき集めてつくるので、味も何もあったものではありません。食感も悪いので、これを「食べられる状態」にするために、やはり加工が必要になります。
 具体的には、「植物性タンパク」「乳タンパク」「卵タンパク」などのタンパク質を注入して肉をやわらかくするのです。N君が食べた肉が妙にやわらかかったのはこのためです。

 

 唐揚げも「植物性タンパク」でカサ増しされていることがあります。
 まず生の肉に「植物性タンパク」「リン酸塩」その他の調味料を注射してカサ増しします。「植物性タンパク」は、肉が8割だとしたら2割ほど入ります。
 その状態では、ドロドロでとても食べ物とは思えないようなシロモノです。はじめて見た人はショックを受け、食欲を失うでしょう。このドロドロのものを、形を整えながら油の中に入れて揚げると「水ぶくれ唐揚げ」の出来上がりです。

 

 冷凍食品の裏ラベル(原材料表示)を見て、鶏肉以外に「植物性タンパク」「大豆タンパク」などと書かれていれば、それはカサ増し商品です。価格が安いという理由で購入していると、本来の鶏の唐揚げとは程遠いものを食べていることになります。

 

「外食コンサルタント」あるいは「フードコンサルタント」「経営コンサルタント」など、よくわからない肩書きの人たちが、町の小さな飲食店に乗り込んで「合理化」を進めています。あるいは食材屋、添加物の営業マンもしきりに「合理化」をささやいてきます。
 「生の鶏肉を仕入れて揚げて出すのでは、余ったときがもったいない。最初から冷凍品を仕入れておけば、必要に応じて冷凍庫から出して揚げて出せる。このほうが利益が出ますよ」
 こういった具合です。
 そしてこの効率化、合理化を図るようになってから、外食店は確実におかしくなってきていると思います。

 

 たとえば宅配ピザにのっている野菜は、ほとんどが輸入野菜です。
 ファミレスで使われている野菜、食べ放題の焼肉店の野菜、きのこ類、立ち食いそばの野菜天ぷらも、輸入野菜がかなり多く使われています。
 しかもその多くが、みなさんがスーパーで敬遠しがちの中国産です。

 

 チェーン店の持ち帰り弁当に使われているご飯、2年前の米、つまり古古米だからです。

 

 ファミレスのサラダに野菜本来の味が感じられないのは、「次亜塩素酸ソーダ」で何度も洗浄され、おいしさも栄養も抜けてしまったカット野菜を使っているからです。
 だから、濃い味のドレッシングをかけてごまかしているのです。もちろんそのドレッシングも、添加物がたくさん入った業務用です。

 

 メインディッシュは自分のところでつくっても、お通しや小鉢ものは仕入れ品を使うという店は、チェーン店に限らず、個人店でもじつに多いものです。

 

 ある店では長年職人が粉からうどんを打って出していたのに、あるときから仕入れの麺を使うことにしたそうです。添加物会社の営業マンが「これと同じぐらいのコシのある麺を必ずつくってくるから」と請け合ったそうです。
 出来上がりを試食してみると本当にコシがあり、手打ちと大差ありません。常連客に出してみたところ、誰からも「味が変わったね」という指摘がなかったため、店で出すことにしたそうです。
 ところが半年後、見事にその店は閑古鳥が鳴くようになったといいます。
 1回、2回食べたぐらいではわからなくても、食べつづけるうちに違いがわかってくる。客はバカではないのです。